理事長より
私と流鏑馬の出会いは1990年、盛岡八幡宮神事流鏑馬で射手奉行として奉仕させて頂いたことが切掛けです。長く一子相伝で受け継がれてきた技と考え方に触れ、その重みと尊さを学ぶと同時に、地方における神事流鏑馬が抱える「馬不足」「後継者不足」という深刻な課題にも直面いたしました。
未来へつなぐためには、時代に即した形での発展が必要である。
その思いが芽生え頃、出会ったのが前理事長 中野渡利彦氏が推進していた「スポーツ流鏑馬」です。

昔から伝わる神事流鏑馬の形・やり方・考え方を礎にしながら、競技として公平性を追求し、安全性や諸道具の研究を重ね、広く学べる仕組みを整える。これにより、流鏑馬に関わる人口が増え、馬の活躍の場が広がり、日本各地の神事流鏑馬を支える人材と馬資源の循環を生み出すと考えます。
いま私たちが直面しているのは、地方の過疎化、担い手不足、伝統文化の継承困難といった、社会全体の構造的課題です。だからこそ流鏑馬もまた、「持続可能性」という視点を持たなければならないと考えています。
スポーツ流鏑馬は、単なる競技化ではなく、日本の流鏑馬文化を持続可能な形で再構築するためのシステムでもあります。私は、やがて「スポーツ流鏑馬が地方都市の流鏑馬文化を救う時代」が必ず来ると信じています。競技として広がることで人材が育ち、その人材が神事へと還元され、地域を支える力となる。そうした好循環こそが、文化を未来へ残す道だと確信しております。
そのために私たちは、多くの皆様と手を取り合いながら歩んでいきたいと考えています。神事関係者、自治体、教育機関、馬産地、企業、そして志を同じくする国内外の仲間と連携し、流鏑馬を通じて持続可能な社会づくりに貢献してまいります。 流鏑馬は遺産ではなく、未来を創る力です。
地方から日本へ、日本から世界へ。
この馬と人が織りなす美しい馬上武芸の文化が広がることは、日本の価値を再認識し、郷土への誇りを育むことにもつながります。
一社)日本流鏑馬競技連盟は、伝統への敬意を忘れず、革新を恐れず、次世代へ責任を持って歩み続けます。 皆様のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
一社)日本流鏑馬競技連盟
理事長
菊池茂勝
副理事長より
千年以上にわたり、男性によって神事として受け継がれてきた流鏑馬。
その歴史は、日本人の精神そのものであり、誇り高き文化遺産です。勇壮にして華麗な流鏑馬の姿には、武の鍛錬というだけではなく、平和への祈りと馬への畏敬を内包しながら、千年の時を超えて日本人の魂として受け継がれてきました。
2005年9月16日、盛岡八幡宮例大祭の神事流鏑馬において、南部流鏑馬会 師範・大森康次先生、並びに南部流鏑馬会副会長・菊地茂勝先生の導きのもと、「招待奉納」という特別な形で、神聖な走路を走らせて頂くという栄誉を賜りました。当時、この奉納は「女性初の流鏑馬奉納」として、全国紙の第一面トップを飾るなど、各社に大きく取り上げられました。しかし、千年という悠久の歴史を思えば、本当に私が最初であったのかどうかは分かりません。ただ一つ確かなのは、その瞬間、伝統の扉が静かに、未来へ向けて開かれたのでは無いかと感じました。
この経験を通して、伝統は「守られるもの」であると同時に、「次世代へ合理的に、そして安全を重要視した形で伝えていくもの」であるべきだと確信いたしました。
スポーツ流鏑馬は、その想いから広がった新しい舞台です。
老若男女、国籍、年齢、文化的背景を問わず、誰もが挑戦できる開かれた世界。そこには、互いを尊重する心が息づいています。
選手が弓を引き、馬と呼吸を合わせ、矢を放つその姿は、単なる競技の光景ではありません。伝統を踏まえつつ時代の要素に応えた「未来への宣言」であり、次世代へ手渡す力強いメッセージだと信じております。

私は、副理事長として、そして一人の女性として、スポーツ流鏑馬を通じて女性活躍の推進とジェンダー平等の理念を伝えていきたいと考えています。スポーツ流鏑馬は、性別による制限を超え、人が本来持つ可能性を解き放つ舞台であると信じています。
育成においても、私たちは単なる競技力向上を目指しているのではありません。
私は指導において日頃より、
「弓使いなくして流鏑馬にあらず、馬乗れずして流鏑馬にあらず」
という言葉を大切にしています。
それは、弓の技と馬との調和、その両方があって初めて流鏑馬が成り立つという、本質を表した言葉。馬と向き合うことで育まれる危険予知能力、責任感、礼節、そして自ら選び決断する力。流鏑馬は、人を強く、そしてしなやかに育てる教育の場でもあります。
さらに、スポーツ流鏑馬は多くの観客を魅了し、地域に新たな活力を生み出しています。その感動は「乗馬を始めたい」という新しい一歩を生み、やがて日本在来馬の未来を支える力へとつながっていきます。文化の継承は、地域創生であり、経済循環であり、社会への貢献でもあるのです。
そして『世界へ誇れる日本の価値』なのです。
スポーツ流鏑馬の選手の皆さんと共に歩きながら、
人と馬、地域と世界をつなぐ架け橋となれるよう、私はこれからも挑戦を続けてまいります。
皆様のご理解とご支援を、心よりお願い申し上げます。
一社)日本流鏑馬競技連盟
副理事長 上村鮎子
